ブラジル岐阜県人会便り
インターネット版
www.gifukenjinkai.org.br
第287号
2015年7月

空心菜という健康野菜、ご存じですか
栄養豊富で、津波被害地でも栽培が期待

     五年前に「岐阜県農業高校生海外実習派遣団」団長として来伯された、恵那農業高等学校・環境科学科の森本達雄先生から一通の手紙と、ある野菜についての資料がブラジル岐阜県人会に届きました。紹介されているのは「空心菜」(クウシンサイ)という名の野菜で、アジアを始め日本国内でも脚光を浴びているようです。
     主に東南アジアの湿地に自生していて、中国やタイ、ベトナム、インドネシアなどの料理によく用いられます。茎が空洞になっているため、炒め物などにすると歯ざわりの良さが楽しめます。その他、くせもアクもないので汁物、和物、サラダとして召し上がれますし、噛みきれない固い茎でもお茶にして味わえます。
     カルシュウム、カリウム、鉄分などが豊富に含まれていて、栄養はほうれん草並かそれ以上という意見もあります。体にカルシュウムが不足すると骨が弱くなり、カリウムが不足すると老化が早まり、鉄分の不足は貧血を起こします。カフェインは含まれていなく、健康茶としてもおすすめです。
     アサガオのような花を付ける為、「アサガオナ」(朝顔菜)とも呼んでいます。その他の別名は「ヨウサイ」(蕹菜)と「エンサイ」(蓊菜)もあり、沖縄では「ウンチェー」(蕹菜)と「ウンチェーバー」(蕹菜葉)とも呼ばれています。
 
空心菜 (クウシンサイ) 空心菜の花

     岐阜県の恵那農業高校では、空心菜を利用した実験が地元の阿木川ダムで平成16年から行われています。事の発端は平成14年と15年の2年連続のアオコの大量発生でした。アオコは水面を覆い尽くし景観を崩し異臭を放つだけではなく、一部には毒素を持つ種類もあり、ダム周辺や下流の市民の生活も脅かします。生活排水や農業排水によってダムの水が富栄養化しアオコなどの藻類の発生を促進させるので、水から余分な有機化合物を取り除けば抑えられます。恵那農業高校は空心菜栽培を利用した水質改善を研究してきました。
     空心菜は比較的に手入れが少なく育てられます。摂氏10度以下だと育たず、霜を受けると枯れますが、暑さにはとても強い植物です。暑い日本の夏と、栄養分が飽和しているダムの水は正に最適な条件です。実験チームが考えたのはダムに大きな筏、「浮島」を作り栽培することです。浮島の構造は生徒たちが試行錯誤を繰り返して改良してきたものです。
     台となっているのがプラスティック製のフロートです。立方体型フロート(50cmx50cmx40㎝)を組み合わせ、耐久性の良いアルミの枠で固めています。人間が数人乗って安全に作業ができる程安定しています、もちろん全員救命胴衣も着用します。
     当初は96個のフロートを用いて運用されていましたが、平成20年には300個を超え、現在の浮島の面積は約130平方メートルに達しています。
     陸で種を苗になるまで育て、プラスティックの籠(コンテナケース)に移植し水上へ移します。毎年夏には阿木川ダム湖で空心菜の植付けがあり、秋に収穫されます。今年は12回目を迎え6月24日に行われました。植付けされた苗の数は約1200本で、収穫量は例年通り1トンを超えると言います。
     収穫した空心菜を成分分析したところ、カルシュウムだけでもほうれん草の7倍近くと報告されています。また、吸収されている栄養分からダムの浄化作用を計算したところ、1束(100グラム)を育てると、約900リットルの水がきれいになるそうです。持続の効果もあり近年ではアオコの発生はほとんど無いそうです。
 
阿木川ダムの浮島で水上栽培 水上で収穫

     この活動は、恵那市、恵那農業高校、水資源機構阿木川ダム管理所とNPO法人ふれんどりー阿木川湖が合同で取り組んできました。恵那農業高等学校は阿木川ダムでの功績で平成22年に「日本水大賞・奨励賞」を受賞しています。隣の愛知県でも、名古屋市の堀川の水質浄化に、空のペットボトルをフロート代わりに使用した「ミニ浮島」の導入を名古屋堀川ライオンズクラブと共同で行いました。更に、平成23年に地震と津波で大被害を受けた東北の復旧に空心菜栽培の導入の為、翌年には恵那農業高校の環境科学科は仙台市を訪れています。津波の被害は、街を流された上に、波が引いた後も土に大量の塩分が残り農業に影響を及ぼし続けます。
     空心菜は塩分を含んだ環境でも栽培可能だと知られています。むしろ塩分濃度が少しある方が(およそ0.5%)よく育つという実験結果もあります。一本の株が育つのに吸収した塩分は2グラムとも計算されていて、海水に浸かった土地の回復が期待できます。ちなみに、この土地の空心菜を食べてみると天然の塩気が感じられるとか。
     宮城県での検証は仙台市の鈴木有機農園と、東松島市の矢本公園応急設住宅と三浦農地でされています。雨が降らず、十分に用水が取れない土地でも空心菜栽培の成功例もあり、乾燥にも強いようです。カンボジアでは、岐阜県ユネスコ協会の協力で、支援活動が実施されていて、空心菜の水上栽培の指導が行われています。
 
コンテナケースにペットボトルを取り付けたミニ浮島 塩分を含んだ仙台の水田でミニ浮島栽培

 

 

家で空心菜を育ててみよう

     乾燥にある程度耐えられ、湿気と猛暑を好む空心菜は、土も必要としないのでアパートのベランダでも栽培できます。
     大きめの容器(コンテナ)に水を入れ、その中に苗を並べたトレイを沈めます。トレイは根が張り支えるところで、網状や穴の空いた形が良い。後は水を与えるだけで育っていきます。これを「コンテナドボン栽培」と呼んでいるようです。トレイとコンテナの間に3センチ程の隙間を石などで作ると根が張りやすくなります。30センチ程に成長したら、先端の柔らかい20センチを収穫します。月に一回程度の収穫が可能です。
     栽培でも利点だらけの、健康野菜の空心菜ですが、「薬も過ぎれば毒となる」で、中国広東省では食べ過ぎると痙攣を起こす事から「抽筋菜」とも呼ばれています。ほうれん草の食べ過ぎも、尿路結石症を起こしたり、鉄分とカルシュウムが吸収され難くくなる逆効果も研究されています。皆さま、健康食品と言えど食べ過ぎにはご注意ください。
 
コンテナの中の空心菜トレイ

参考資料の発行元:「岐阜県立恵那農業高等学校」、「阿木川ダム管理所」、「堀川千人調査隊団体」

ブラジル岐阜県人会にも資料のコピーがあります。空心菜に興味のある方はご問い合わせ下さい。


Copyright Brazil Gifu Kenjinkai. All rights reserved.
www.gifukenjinkai.org.br